2009年 02月 21日
「埼玉県産フチグロトゲエダシャク 2009 Spring」 Canon EOS Kiss Digital X/EF-S10-22mm USM/トリミング/Photoshop CS2 1981年以来、確認報告がなかった埼玉県のフチグロトゲエダシャク。 埼玉県レッドデータ2008年版では「絶滅危惧I類」になっています。 これより上のランクは「絶滅」と「野生絶滅」のふたつだけ。 まさに崖っぷち、後が無い状況なのが「絶滅危惧I類」なのであります。 一方で、埼玉県に限らずフチグロの新産地発見の報はなかなかありません。 草原性の種ですから「絶滅危惧I類」なのは確かであると同時に、「情報不足」カテゴリーにも あてはまるのが、フチグロトゲエダシャクの現状ではないかと感じています。 新産地を探すくらいなら素人の私にもできるんじゃあるまいか、と思って、 昨年は荒川の一部を探してみましたが、みごとに玉砕。 うーん、やっぱり埼玉にはフチグロはいないのかしら ... と思っていたところ、 夢見ぬ蝶愛好家の部屋のふかし氏が2008年3月1日に埼玉県内でフチグロを確認されたとの情報を聞きました。 さっそく、ふかし氏に連絡をとり詳細を聞かせていただくとともに、 蛾類学会ならびにフユシャク研究の第一人者である中島秀雄先生への報告の許諾をいただきました。 チーカナには、がんもさん、蛾LOVEさん、シノブさんと3名の学会員がおりますので、 たとえ自分たちの発見でなくとも、学術的に価値のあることについて橋渡しすることも役割のひとつだと思っていますです。 昨年中に蛾類学会で、埼玉県内でふかし氏により27年ぶりに再確認されたことをプレゼン発表し、 現在も、がんもさんと蛾LOVEさんに文書での発表の準備を進めていただいておりますです。 「埼玉県産フチグロトゲエダシャク 2009 Spring」 Canon EOS Kiss Digital X/Canon Macro Photo Lens 35mmF2.8/内蔵ストロボ/Photoshop CS2 ふかし氏の偉業を知ったのはすでにフチグロのシーズンが終わったあとでしたので、 今年、満を持して埼玉県産フチグロを見に行ってきました。 今回は故郷・埼玉のトンボのMatszさん親子、狭山市の自然のATSさん、なんとなーく昆虫撮影の川北和倫さんにお声をおかけしました。 3人とも埼玉県を中心に精力的にフィールドに出ている方々です。 そしてチーカナはシノブさんと私が参加しました。 最近はDNAバーコードなど、最新機器を導入して行う研究がさかんになり、 アマチュアの入る余地がないと悲観する意見がありますが、私は違うと思っていますです。 高額な機器を使用する研究は、それらを導入できる組織にやってもらえばよいわけで、 たとえば新生息地の発見などは地元に密着したアマチュアが断然有利であります。 今回も、Matszさん、ATSさん、川北さんにフチグロの環境を見ていただいて、 埼玉県内の新たなフチグロポイント発見につながるといいなと思っています。 さて朝10時に集合しポイントに行って驚いたのは、私が知る神奈川県内のポイントとまったく環境が違うことでした。 正直、 え!ホントにここにフチグロがいるの!? と思ってしまいました。 でも数日前に川北さんが偵察し♂が飛ぶ姿を見ているので、フチグロが棲息しているのは間違いありません。 小学生のGanakoちゃんを先頭に、20代、30代、そして40代オーバーの面々が目を凝らしてフチグロを探しながら歩を進めます。 ここで圧倒的なフチグロ発見能力を発揮したのがシノブさんでした。 いた!!!!!! と叫ぶと同時に、斜面だろうがなんだろうが猛ダッシュしてフチグロを追いかけます。 すごい。。。 シノブさんがこんな無駄のない俊敏な動きしてるのはじめて見た。 前の晩のテレビの深夜番組で ジャニーズのV6相手に大立ち回りしてきた 同一人物とは思えない Σ(゚д゚;) 「産卵する埼玉県産フチグロトゲエダシャクの♀ 2009 Spring」 Nikon D300/SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM/Photoshop CS2 しかし北風が強いせいか、飛んでもかなり低いところを蛇行してゆくのですぐに見失ってしまいます。 ウチの近所の河原だと、私の背より高い位置をぶっ飛んでいくこともしばしばあるんですけどねー。 これじゃ撮影は無理かなぁと思い始めていたときでした。 川北さんが♂を見つけ追ってゆくと、ひょいと草地に着地しました。 そこにいたのはフチグロの♀。 「おおっ、交尾だあー O(≧▽≦)O ワーイ♪」 一気にテンションがあがる捜索隊メンバー。 交尾が解除されたあともしばらく♂は飛び去ることなく、シノブさんの指にのっかるサービスぶり。 フチグロの♀は交尾後すぐに産卵を開始するので、みんなで産卵の様子を観察しました。 ところで今回、シノブさんにはフチグロの採集・標本作製をお願いしました。 小学生のGanakoちゃんは「どうして捕まえちゃうの?写真じゃダメなの?」と不思議そうでしたが、 標本を残すことには学術的にとても重要な意味があります。 一例ですが、先に述べたDNAバーコードで調査するにはサンプルが必要になります。 この場合、写真だけではどうにもなりません。 がしかし、学術的な意味合いでの採集と「タコ獲り」は区別されなくてはならないと思います。 したがって 獲らせません、産むまでは。 というわけで♀が産卵しているあいだ、じーっと待機。 フチグロの♀は飛べないとはいえ、歩行での移動能力が高いので、 とにかく間近で目を離さないようにしていないともう二度と見つかりません。 2時間経過。 ずっと「待て」だったポチ犬シノブさんに1♂1♀を採集してもらい、 産卵された枝を茂みの奥に移動させて、 埼玉フチグロ捜索隊は無事に終了したのでありました。 Matszさん、ATSさん、川北さん、シノブさん、お疲れさまでした♪ また、貴重な情報を快く提供くださった、ふかし氏に厚くお礼申しあげます。 ありがとうございました☆ →Irregular serial ♯21 フチグロトゲエダシャク捜索隊2008(その4)はこちら →Irregular serial ♯20 フチグロトゲエダシャク捜索隊2008(その3)はこちら →Irregular serial ♯19 フチグロトゲエダシャク捜索隊2008(その2)はこちら →Irregular serial ♯18 フチグロトゲエダシャク捜索隊2008(その1)はこちら →フチグロトゲエダシャク捜索隊2007(2007.3.6)はこちら →フチグロトゲエダシャク捜索隊2007(2007.2.25)はこちら →Test ♯125「フチグロトゲエダシャクの交尾」はこちら →Test ♯124「フチグロトゲエダシャク」はこちら
by Faunas_and_Floras
| 2009-02-21 21:19
| Irregular serial
|
アバウト
カレンダー
Profile/お知らせ/リンク
Profile:真神ゆ 昭和42年12月東京都文京区出身。神奈川県在住。二児の父。 連絡先はこちら(神奈川をローマ字にしてください)→team神奈川.insect@gmail.com リンク☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ @鉄道、飛行機からチワワまで乗り物ならなんでもOKのサイト。高校時代の同級生っス。なんかぜんぜん更新されてないね。おーい、生きてるのかぁ? 本隊はこちら→Blueforce 分遣隊(Blog)はこちら→★Blueforceはてな分遣隊★ ☆チーカナ・ネットワークのサイトはこちら @一寸野虫さん →相模国之自然スケッチ @蛾LOVEさん →ある蛾屋の記録 @VIEWさん →VIEW's Photo Gallery @シノブさん →今夜も!Gavyori @Matszさん →故郷・埼玉のトンボ トンボのみならず蝶や蛾にも詳しいMatszさんの手作り図鑑は必見です☆ →「ちょう・がのずかん」 Matszさんのブログはこちら♪ →「Days of Dragonflies & Moths」 @川北和倫さん →蛾色灯。 @ATSさん →狭山市の自然 @spaticaさん →雑蟲堂本舗 →ふしあな日記 @そよ風ふくさん →日日面白日記 @昆虫写真家 森上 信夫さん →昆虫写真家・森上信夫の ときどきブログ @昆虫写真家 尾園 暁さん →photombo.net @yyzz2さん →yyzz2;虫撮記 @micromyuさん →むしとり。 @トウテツさん →きみと そこらでも @りゅうひさん →虫の棲む星 ☆TODさんとAshさんのサイト →野道を行けば ちょっぴり蛾にも興味がもてたら、ぜひこちらも♪ →蛾飢道連盟 ☆Dodo-boyさんのサイト →週末がさがさ団 ☆yamaさんのサイトとブログ →田舎で暮らそう! →海と写真とウェブログと ☆kanabunさんのサイト →和歌山の里山便り →ブログ『和歌山の里山便り』 ☆ノゾピーさんのサイトとブログ →ノゾピー蝶観察・撮影の部屋 →蝶&鳥日記 2 ☆ma23さんのサイトとブログ →蝶にあそぶ →蝶にあそぶろぐ ☆いつもコメント多謝!(^ ^ ベランダの訪問者たち みなみ野フォトログ ☆ギフチョウを発見した名和靖氏が設立した昆虫専門の博物館。岐阜遠征ではお世話になりました! 『名和昆虫博物館』公式ホームページ 検索
今日は蛾日和?!
フォロー中のブログ
一寸の虫にも五分の魂 風まかせ、カメラまかせ 阿藤智恵の「気分は缶詰」日記 Rasboraras Y's ROOM 石神井公園の蟲日記 蝶&鳥日記 2 ヘムレン の Natur... 虫の棲む星 ぴの & 308CC &... VIEW's Natur... 宮城県 県民の森blog 大空を見上げて・・・ VIEW's Botan... 公園昆虫記 ...古河昆虫の会 旧ジ... タグ
蛾(665)
虫(618) 蝶(353) 野鳥(175) トンボ(128) テントウムシ・カミキリムシ・こうちゅうなど(126) セミ・カメムシなど(83) 植物・花・キノコ(53) 両生類・は虫類(48) さかな・水の中の生き物(47) 哺乳類(44) ハチ・アブ・アリなど(37) そのほかの生き物(34) 蜘蛛(28) バッタ・カマキリなど(26) 海外(16) 猫(5) 冬尺蛾(3) 犬(3) 風景(1) カテゴリ
全体 Irregular serial Season event 近所の河原 周辺の河原(上流側) 周辺の河原(下流側) 周辺の山 近隣の水系 そのほかの水系 撮影機材 自動販売機/電話BOX/外灯 海 自宅にて 未分類 ライフログ
以前の記事
2017年 07月 2017年 06月 2017年 04月 2016年 11月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 最新のトラックバック
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||