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Faunas & Floras Phase2

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2009年 02月 21日

Irregular serial ♯25 埼玉フチグロトゲエダシャク捜索隊 2009

Irregular serial ♯25 埼玉フチグロトゲエダシャク捜索隊 2009_e0065734_23371846.jpg

「埼玉県産フチグロトゲエダシャク 2009 Spring」
Canon EOS Kiss Digital X/EF-S10-22mm USM/トリミング/Photoshop CS2

1981年以来、確認報告がなかった埼玉県のフチグロトゲエダシャク。
埼玉県レッドデータ2008年版では「絶滅危惧I類」になっています。
これより上のランクは「絶滅」と「野生絶滅」のふたつだけ。
まさに崖っぷち、後が無い状況なのが「絶滅危惧I類」なのであります。

一方で、埼玉県に限らずフチグロの新産地発見の報はなかなかありません。
草原性の種ですから「絶滅危惧I類」なのは確かであると同時に、「情報不足」カテゴリーにも
あてはまるのが、フチグロトゲエダシャクの現状ではないかと感じています。

新産地を探すくらいなら素人の私にもできるんじゃあるまいか、と思って、
昨年は荒川の一部を探してみましたが、みごとに玉砕。
うーん、やっぱり埼玉にはフチグロはいないのかしら ... と思っていたところ、
夢見ぬ蝶愛好家の部屋のふかし氏が2008年3月1日に埼玉県内でフチグロを確認されたとの情報を聞きました。

さっそく、ふかし氏に連絡をとり詳細を聞かせていただくとともに、
蛾類学会ならびにフユシャク研究の第一人者である中島秀雄先生への報告の許諾をいただきました。
チーカナには、がんもさん、蛾LOVEさん、シノブさんと3名の学会員がおりますので、
たとえ自分たちの発見でなくとも、学術的に価値のあることについて橋渡しすることも役割のひとつだと思っていますです。
昨年中に蛾類学会で、埼玉県内でふかし氏により27年ぶりに再確認されたことをプレゼン発表し、
現在も、がんもさんと蛾LOVEさんに文書での発表の準備を進めていただいておりますです。

Irregular serial ♯25 埼玉フチグロトゲエダシャク捜索隊 2009_e0065734_11423617.jpg

「埼玉県産フチグロトゲエダシャク 2009 Spring」
Canon EOS Kiss Digital X/Canon Macro Photo Lens 35mmF2.8/内蔵ストロボ/Photoshop CS2

ふかし氏の偉業を知ったのはすでにフチグロのシーズンが終わったあとでしたので、
今年、満を持して埼玉県産フチグロを見に行ってきました。
今回は故郷・埼玉のトンボのMatszさん親子、狭山市の自然のATSさん、なんとなーく昆虫撮影の川北和倫さんにお声をおかけしました。
3人とも埼玉県を中心に精力的にフィールドに出ている方々です。
そしてチーカナはシノブさんと私が参加しました。

最近はDNAバーコードなど、最新機器を導入して行う研究がさかんになり、
アマチュアの入る余地がないと悲観する意見がありますが、私は違うと思っていますです。
高額な機器を使用する研究は、それらを導入できる組織にやってもらえばよいわけで、
たとえば新生息地の発見などは地元に密着したアマチュアが断然有利であります。
今回も、Matszさん、ATSさん、川北さんにフチグロの環境を見ていただいて、
埼玉県内の新たなフチグロポイント発見につながるといいなと思っています。

さて朝10時に集合しポイントに行って驚いたのは、私が知る神奈川県内のポイントとまったく環境が違うことでした。

正直、

え!ホントにここにフチグロがいるの!?

と思ってしまいました。

でも数日前に川北さんが偵察し♂が飛ぶ姿を見ているので、フチグロが棲息しているのは間違いありません。
小学生のGanakoちゃんを先頭に、20代、30代、そして40代オーバーの面々が目を凝らしてフチグロを探しながら歩を進めます。
ここで圧倒的なフチグロ発見能力を発揮したのがシノブさんでした。

いた!!!!!!

と叫ぶと同時に、斜面だろうがなんだろうが猛ダッシュしてフチグロを追いかけます。

すごい。。。
シノブさんがこんな無駄のない俊敏な動きしてるのはじめて見た。

前の晩のテレビの深夜番組で
ジャニーズのV6相手に大立ち回りしてきた
同一人物とは思えない
Σ(゚д゚;)

Irregular serial ♯25 埼玉フチグロトゲエダシャク捜索隊 2009_e0065734_12182366.jpg

「産卵する埼玉県産フチグロトゲエダシャクの♀ 2009 Spring」
Nikon D300/SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM/Photoshop CS2

しかし北風が強いせいか、飛んでもかなり低いところを蛇行してゆくのですぐに見失ってしまいます。
ウチの近所の河原だと、私の背より高い位置をぶっ飛んでいくこともしばしばあるんですけどねー。
これじゃ撮影は無理かなぁと思い始めていたときでした。
川北さんが♂を見つけ追ってゆくと、ひょいと草地に着地しました。
そこにいたのはフチグロの♀。
「おおっ、交尾だあー O(≧▽≦)O ワーイ♪」

一気にテンションがあがる捜索隊メンバー。
交尾が解除されたあともしばらく♂は飛び去ることなく、シノブさんの指にのっかるサービスぶり。
フチグロの♀は交尾後すぐに産卵を開始するので、みんなで産卵の様子を観察しました。

ところで今回、シノブさんにはフチグロの採集・標本作製をお願いしました。
小学生のGanakoちゃんは「どうして捕まえちゃうの?写真じゃダメなの?」と不思議そうでしたが、
標本を残すことには学術的にとても重要な意味があります。
一例ですが、先に述べたDNAバーコードで調査するにはサンプルが必要になります。
この場合、写真だけではどうにもなりません。

がしかし、学術的な意味合いでの採集と「タコ獲り」は区別されなくてはならないと思います。
したがって

獲らせません、産むまでは。

というわけで♀が産卵しているあいだ、じーっと待機。
フチグロの♀は飛べないとはいえ、歩行での移動能力が高いので、
とにかく間近で目を離さないようにしていないともう二度と見つかりません。

2時間経過。

ずっと「待て」だったポチ犬シノブさんに1♂1♀を採集してもらい、
産卵された枝を茂みの奥に移動させて、
埼玉フチグロ捜索隊は無事に終了したのでありました。

Matszさん、ATSさん、川北さん、シノブさん、お疲れさまでした♪
また、貴重な情報を快く提供くださった、ふかし氏に厚くお礼申しあげます。
ありがとうございました☆

Irregular serial ♯21 フチグロトゲエダシャク捜索隊2008(その4)はこちら
Irregular serial ♯20 フチグロトゲエダシャク捜索隊2008(その3)はこちら
Irregular serial ♯19 フチグロトゲエダシャク捜索隊2008(その2)はこちら
Irregular serial ♯18 フチグロトゲエダシャク捜索隊2008(その1)はこちら
フチグロトゲエダシャク捜索隊2007(2007.3.6)はこちら
フチグロトゲエダシャク捜索隊2007(2007.2.25)はこちら
Test ♯125「フチグロトゲエダシャクの交尾」はこちら
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by Faunas_and_Floras | 2009-02-21 21:19 | Irregular serial


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